小麦:北海道フードマイスター
こんにちは食農小話です。
今回は小麦のお話。
小麦はイネ科コムギ属の作物です。
原産地は中央アジアの方で、栽培の歴史は1万年にもなるといわれています。
日本には、弥生時代に伝わったようです。日本の心と言われる稲作が伝わったのとほぼ同時期に小麦も伝わっていたということです。
特に、稲作の収量が不安定で貴重だった頃は、コメは身分の高い人や神への捧げ物という性質もありました。なので、一般人にとっては、粟などの雑穀と合わせて、小麦は主食としてとても身近な作物でした。
明治時代から本格的な小麦の増産が始まり、ピークの昭和20年は150万トン生産されていました。その後、昭和48年には、外麦(がいばく:外国産の麦)の安さに負けて20万トンまで減少しました。
この頃には、反対にコメの生産は十二分にされるようになり、みんなお腹いっぱい白米を食べられるようになって、次第にコメ余りの時代に突入します。
国産小麦の引き合いは強く、今では90万トンまで生産量は回復しました。
特に、パン屋の国産小麦志向は強く、ポストハーベスト農薬(収穫後の輸送時に使われる、本来生産には必要のない農薬)を使わないことや、日本で決められた農薬を確かに守っていることが、安全安心として使われています。
現代では小麦は小麦粉にしてから、再加工して食の現場に登場します。
小麦はその成分によって形質が大きくかわり、用途が変わります。
強力粉、中力粉、薄力粉と聞けば分かりやすいでしょうか。
「炭水化物」と言われる小麦粉にもタンパク質が6~15%ほど含まれています。(コメは6〜8%くらい。)
小麦のタンパク質の中に、「弾力があるけど伸びにくい」グリアジン、「弾力は弱いが粘着力が強く伸びやすい」グルテニンがあります。
加水してこねると、両方の性質をあわせ持った「グルテン」というタンパク質ができます。
グルテンフリーって聞いたことありますよね。あれは、小麦のタンパク質不耐症ということです。
つまり、タンパク質が多いか少ないかによって用途分けされているわけです。
強力粉は、タンパク質含有率が高く11.5-12.5%で、硬質小麦と呼ばれます。主な北海道品種は、秋まき小麦で、ゆめちから、キタノカオリ。春まき小麦で、春よ恋などがあります。用途は、ラーメンやパンです。
中力粉は、タンパク質含有率が7.5-9.0%で、中間質小麦と呼ばれます。主な北海道品種は、きたほなみです。用途は、うどんやパンです。
薄力粉は、タンパク質含有率が低く6.5-8.0%で、軟質小麦と呼ばれます。主な北海道品種は、ありません。現在、品種改良中で、有望な品種が試験されています。うまくいけば、5年後くらいには出てきます。用途は、お菓子やケーキです。
北海道内小麦収量ランキング(2016北海道農政事務所)は
です。
北海道の幅広い地域で生産されていることが分かりますね。
北海道の秋まき小麦栽培は、9月に種まきして、ある程度育ったら、雪が降って雪の下に半年間埋まっています。そして春が来て、再び生育を始めて、7月末頃に収穫します。越冬させるユニークな作物なのです。
皆さん北海道を秋にドライブしていて、畑に緑の草が一面にあっても、それは雑草じゃ無いですよ。健気な小麦たちです。
余談
小麦のワラって英語でなんて言うか知ってますか?
ストローです。ストローハットって麦わら帽子の事ですよね。
プラスチックが台頭するまでは1950年代までワラのストローを使ってたらしいですよ。
最近の当たり前なんて、少し歴史を遡れば全然当たり前じゃないですね。